白須ラボ20周年を迎えて
2025年9月26日、白須ラボの20周年を記念するシンポジウムと懇親会が開催されました。正確には、理化学研究所に研究室を立ち上げてから20周年を迎えた節目にあたります。振り返れば、その歴史の前半には英国での5年間の研究室運営があり、まさに国際的な視点と挑戦を礎とした歩みでした。
私は白須ラボの歴史の中で、ちょうど中間にあたる10年前からの4年間を過ごしました。当時の経験は今も研究者としての自分に強い影響を与え続けています。驚くべきことに、立ち上げ期のメンバー4名ほどが今も在籍しており、その持続力と結束の強さに心を打たれました。これまでの20年で200本を超える学術論文と2万回以上の引用、約90名もの研究者が関わったことも紹介され、改めてその研究室のスケールと実績に圧倒されました。近年では Nature や Science に成果が掲載され、世界的にも高い評価を得ています。
懇親会の最後に白須先生が語られたのは「自分には強い思想があったわけではない。むしろ上司と合わなかった経験をもとに、自分は”面白いことを自由にできる場”を提供することに徹してきた」という率直な思いでした。科学をエンターテイメントとして捉え、20年という時間が一瞬のように過ぎたと笑顔で語られる姿に、研究室を率いる覚悟と寛容さを感じました。先生は研究をワインの熟成に例え、「仕込むときに味は予測できないが、20年後に輝くものもある。今こそ次の20年を見据え、未来に希望を託す研究を仕込む時だ」と語られました。その言葉は、私自身がこれから研究室をどう運営していくべきかを深く考えさせてくれるものでした。
白須先生から差し入れされた23年物のワインと共に
懇親会では私もスピーチの機会をいただき、「白須ラボはとにかくすごい。自分に大きな影響を与えてくれた。ただ自分は違う道を歩んでいる。違いを受け入れ、新しい方向に導いてくれたのは白須先生が豊穣させた風土のおかげだ」と述べました。違いを否定せず、むしろ新しい芽を尊重してきた文化こそが白須ラボの強みであると強く感じています。
また、このイベントの翌週には理研の環境科学領域リトリートが開催され、CSRS、BRC、IMS、iTHEMSを牽引するメンバーが集まりました。総合討論の場で司会を務められた白須先生から「今後の理研にはボトムアップの意見が必要だ」と投げかけられ、私の名前を挙げて「次のトレンドについて語れ」と促されました。私はこれまで議論を重ねてきた ONE HEALTH VILLAGE 構想 について発言し、多くの反響をいただきました。これが次のトレンドの芽になるのかもしれない、と胸が高鳴る瞬間でした。
20周年の節目に立ち会い、研究者としての道を改めて見つめ直す機会をいただいたことに感謝しています。未来を見据えながら、今の自分を信じ、一歩ずつ進んでいきたいと思います。