ご縁に導かれて教育分野での論文発表
教育分野の国際学術誌 Frontiers in Education に、私たちが取り組んだプレゼンテーション研修に関する論文が掲載されました。普段の研究テーマとは異なる領域で論文として成果を発表できたことは、私にとって大変貴重な経験でした。
原著論文
リリース記事
今回の研修会は、「話そう!伝えよう!つながろう!」を合言葉に開催されたもので、体系的なプレゼンテーション教育の重要性を明らかにするものでした。アンケート調査の結果、発表に苦手意識を持つ参加者ほど体系的な研修機会を欠いていることが示され、個別のフィードバックだけでは十分に支援できないことが浮き彫りになりました。つまり、専門分野や世代を超えた人々が共に学び合える、包摂的なトレーニング環境の必要性が明確になったのです。
この取り組みの中心にいたのは島根大学の古水千尋さんでした。博士課程の頃から、研究全体の進め方から実験の細部に至るまで多くを学ばせていただき、いつも支えてくださった大切な先輩です。今回も新しい分野に誘ってくださり、私はそのご縁の中で少し解析をお手伝いする程度の役割を担ったに過ぎません。構想からワークショップの実現までを力強く推進された古水さんの行動力と視野の広さに、改めて感銘を受けました。
論文のタイトルにある “Let’s speak, communicate, and connect!” という言葉は、研究者として大切な姿勢を象徴していると思います。科学の世界は高度に専門化が進み、時に自分の分野に閉じこもってしまう危うさがあります。しかし、プレゼンテーションを通じた自己表現は、研究者の本来のアイデンティティでもある「クリエイティブさ」を取り戻す契機になるのではないでしょうか。今回の研修では、多様なバックグラウンドを持つ人々とつながり、研究者としての立ち位置を振り返りながら、本来の研究の楽しさを再発見することができました。
近年、研究者の間では「どの雑誌に論文が載ったか」「どれほど外部資金を獲得したか」といった話題が先行しがちです。しかし、それだけでは見えてこない大切なものがあるはずです。研究はもともと、興味や楽しさ、そして人と人とのつながりから生まれる営みです。今回の発表を通して、その原点を思い出し、自分が恵まれた環境にいることを強く感じました。
このワークショップは現在も日本植物生理学会の場で継続的に実施され、内容をアップデートしながら広がりを見せています。生命科学分野の私たちが発表する論文としては異色かもしれませんが、気軽に読んでいただける内容になっていますので、ぜひご覧いただければと思います。そして、このような試みが研究者一人ひとりのクリエイティビティを刺激し、分野や世代を超えた新しい交流と学びを生み出していくことを願っています。