宮崎の茶園から学ぶ、地域とともに歩む研究

Author

Soyoung Park

Postdoctoral Researcher
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山々の深い森を霧が包み、森から湧き出た清水が茶畑を潤す。そしてその水は下流の水田へと流れ込む。


宮崎県五ヶ瀬・高千穂地域は、世界農業遺産「高千穂郷・椎葉山地域」に認定され、森林と集落、茶畑、水田がつながる景観が今も残ります。古くから自然と共生する農業が受け継がれ、希少な釜炒り茶の生産が行われています。また森林セラピーの取り組みも進められており、地域全体の自然資源を活かした価値づくりの取り組みが行われています。まさに自然とともに暮らし、自然とともにお茶を育ててきた人々の営みがあります。

今回、私たちは宮崎県五ヶ瀬・高千穂地域の茶園を訪問し、地域の生産者や研究者の方々から、お茶づくりへの想いや地域との関わりについて学ぶ機会を頂きました。

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最初に訪問した宮崎茶房では、「土地が生き、人が生きる茶園」という言葉がとても印象的でした。
茶園の奥には森があり、その森が水を育み、茶畑を支えています。茶園には水神様が祀られ、自然への敬意が日々の営みの中に息づいていました。
宮崎茶房では、化学農薬を使用しない栽培に取り組み続けています。
茶葉の焙煎も機械的な数値だけではなく、香りや音、色など人間の五感を頼りに仕上げるそうです。

また地域の小学校へ釜炒り茶の出前授業を行っています。最初、子どもたちの多くが既製品のお茶を選ぶものの、実際に釜炒り茶を味わった後には釜炒り茶を選ぶ子どもが増えるそうです。

「知らないから選ばれない。」

地域の文化を未来につなぐためには、おいしさを伝える機会をつくることも大切なのだと感じました。

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次に訪問した一心園では、「品評会のためのお茶ではなく、自分たちが本当においしいと思うお茶をつくる」という姿勢が印象的でした。

茶園それぞれの土壌を分析しながらミネラルバランスを整えた管理をしています。
お茶の味は、地域や年ごとの気候によって大きく変わるそうで、「同じ畑でも、その年の雨や干ばつで味は変わる。」との言葉は、自然と向き合う農業の難しさと面白さを感じさせました。
一般的に、遮光(被覆)によってうま味を強くする栽培に対して、一心園では「あえてうま味をのせすぎない」釜炒り茶づくりを目指しているそうです。品評会向けの評価基準とは異なる、自分たちが届けたい味を大切にしていました。

また、地域資源を循環させる工夫も数多く見られました。
土手のカヤ、籾殻、焼酎かす、お茶の製造くずを利用した自家製堆肥や、自家製発酵肥料づくりなど、地域にあるものを活用しながら持続可能な栽培を実践しています。
他にもお茶を使ったジンの開発など、民間企業とも連携し、新たな価値づくりにも取り組まれていました。

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最後に兼業農家として茶づくりを続けている高千穂の茶園を訪問しました。
労働支援の実証試験が予定されており、省力化による持続可能な茶業が期待されています。

また、希少品種「ウンカイ」を守り続けるなど、地域の遺伝資源を未来へ残す取り組みも行われていました。

今回各茶園を訪問して学んだことは、単にお茶を育てる技術だけではありませんでした。

最も印象に残ったことは、「お茶を飲む人への愛情」、そして「地域で農業を続ける人たちへの愛情」が、研究の原動力になっているということでした。
その姿勢を象徴していたのが、地域に深く入り込み、生産者とともに課題を見つけ、一緒に解決策を考える「レジデント型研究者」を実践されている坂本先生です。 先生は、茶園で働く方々の労働負荷を軽減し、農業生産を持続可能なものにするための研究に取り組まれています。長年に渡り、生産現場に足を運びながら、現場の課題を一つ一つ見つめ、生産者の方々とともに解決策を考え、研究成果を実際の農業へ繋げてこられました。その姿勢は、まさに『レジデント型研究者』と呼ぶにふさわしいものでした。
「研究のための研究」ではなく、「地域で暮らす人が、もっと自信を持って農業を続けられるように」という想いが、研究の中心にありました。
その姿勢に触れ、ラボメンバーも「自分たちには何ができるのだろう」と自然に考え始めていました。私たちがこれから目指したい研究のあり方を、実際の現場で見ることができたように思います。

今回の視察では、農業の課題だけではなく、その背景にある地域の歴史や文化、人々の想いに触れることができました。
研究によって新しい技術を生み出すことはもちろん大切ですが、その技術が現場で本当に役立ち、地域の人たちが笑顔で農業を続けられることこそが研究の価値なのだと改めて感じました。
私たちのラボでも、植物と微生物の研究を通じて、生産者の方々とともに課題を考え、地域と歩む研究を進めていきたいと思います。
今回の視察は、その第一歩となる貴重な学びの機会となりました。

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